消費者側のファッションに関するテクノロジーやイノベーションが著しく進展する一方、それを提供する企業側の変化はこの数年芳しくない。 まるで古き良き時代への永遠の賛美に浸るかのように、商品企画チーム(MD・プランナー)の仕事の進め方や彼らが使う業務用システムは、3つ穴バインダーを使っていた1970年代からほとんど変わっていない。商品企画の担当者たちは、その多くがデジタル世代であるにもかかわらず、日々奇妙なタイムワープをしている。 消費者側の世界と、 画像やインタラクティブなデータ、ツールを使いこなして解釈するスキルを必要としないオフィス側の世界とを毎日往復しているのである。

しかし、そうした状況もがらりと変化してきている。

 

商品企画の担当者も今やマーケティング担当者が駆使しているようなテクノロジーを取り入れ始めている。そして、このテクノロジーの新しい活用方法を開拓し、商品政策や計画の立案における重要な判断の精度を向上させ、業務改善やスピードアップを図ろうとしている。

昨夜、ある小売企業のバイヤーはFacebookを介して友人たちとの食事会を設定し、「Yelp」のレビューを参考に「OpenTable」でお店を予約し、「Pinterest」をブラウジングしながら着ていく服を決め、「Siri」で店までの車のルートを確認した。生活やさまざまな判断に必要な情報を、ライフスタイルの中にすっかり浸透したテクノロジーから得ているのである。

ところが翌朝、いざオフィスに着くと、素晴らしく賢いて人工知能学習ツールを備えたモバイルインターフェースは姿を消してしまう。リアルタイムのデータを読み解き、素早く決断する能力は終日発揮されることなく、分厚い電話帳やダイヤル式の電話、V字型アンテナと大差ないアナログツールを使って、担当カテゴリーの品揃えの実績を上向かせるという重要課題と闘っている。

チャンスは膨大にある。消費者は既により視覚的に理解できデータとの連携性のある販売形態に親しんでいる。その一方、大半の小売企業はデータマイニングや予測分析、データ視覚化ツールの導入に大幅な遅れを取り、商品企画担当者はいまだ勘や想像力に頼らざるを得ない状況に取り残されている。

また、従来の方法によって商品企画担当者と仕入先が共有している情報は、必ずしも関係者全員に明確に伝わっているわけではない。 多種多様な画像データや分析情報が飛び交うことで互いが阻害し合い、すべてを集約して一つの明確な理解を導くどころか、むしろ物事を停滞させている。

先進的なブランドや小売企業は、消費者の世界に存在する情報検索ツールや判断ツールなどのテクノロジーを自社の経営に取り入れることで、持続可能な成長を実現させようとしている。そうした企業では現在、直感的で機能性に優れた高品位ツールへのアップグレードが進められ、スタッフは自分たちが日常生活で使用しているものと同じ感覚でテクノロジーを利用できるようになってきている。こうした高品位ツールには次のような利点がある。

1. 商品を視覚化して捉え、トレンドとつなげて考えられる

2. 新たな気付きや従来であれば見えなかった関係性の発見をサポートする

3. ソーシャルメディアや消費者の世界と同じ方法で双方向の連携ができる

4. 世界中の取引先とリアルタイムでつながり、協力してより的確で迅速な判断を下すことができる。

 

視覚化

消費者は見た目の判断によって購入する。しかし、こうした消費者に何を売るかの判断においては、商品企画担当者は、商品の見た目と実績が切り離されたプロセスに未だに囚われ続けている。大人気のメタリックアンクルブーツがEXCELスプレッドシートのセルの一つにある商品番号7035276としか見えていない限り、商品企画担当者の審美眼と分析能力を完全に一体化させることはできない。一方、革新的な小売企業は、金融工学とビジュアルアートを融合させて考えている。多数のSKUやスプレッドシートをかき分けた挙句に商品サンプルルームを仕込むのではなく、インタラクティブなデジタル商品画像をプランニングソフトウェアや分析判断プロセスに組み込むのである。

表とグラフで埋め尽くされた1970年代の遺産である「マンデーモーニングレポート」の時代は、(仮にそれが見た目上インパクトのあるものだとしても)画像中心カルチャーを反映したデジタル時代の実績レポートの浸透によって最終的には終わりを迎えることになるだろう(図1参照)。財務データ指標とリンクしてインタラクティブに表示される商品画像を活用することによって、商品企画担当者は、何行あるか見当もつかないデータを手間暇かけて掘り出すことなく、トレンドを見極め、従来より深い洞察をいち早く得ることができる。統計に基づく視覚的なトレンド分析を行うことで、より訴求力の高い品揃えを実現させると同時に、利益率の予測も可能となる。こうした変革の効果は、計測可能な業績改善となって現れる。例えば、意思決定が30~40%速くなることで、在庫生産性の10~20%改善、大幅値下げの最大15%削減などが期待できる。

 

サポート

従来、商品企画担当者は、(ともすれば1年前の)限られた情報によって判断を行ってきた。そして今は、それとは真逆の問題に直面している。支離滅裂とした膨大なデータとの格闘である。洪水のように押し寄せる情報を集計し、読みこなし、決定を下すのは人間業ではない。これは、商品企画担当者が雑音の中に身を置いているだけで、その判断力が今までよりも上がることはない。

業務プロセス設計者が至急に行うべきは、各チームを新たな発見へと導く手段を根本的に改善することである。幸いにも、そのためのテクノロジーは既に整っている。裏方だったデータマイニングは、今や統計を用いて商品、場所、顧客属性を売上実績や財務指標と相関させ、自動的にプランを提案してくれる。商品企画担当者は、これを指針に評価を行うべき主項目に集中することができる。もはや、実用的な結果を導くかどうかも分からないデータの検索や数値処理に時間を割く必要はない。

図1:スプレッドシートの代わりに商品画像を使うことで商品企画における感性と科学がミックスされ、より素早くより   適切な仕入れ判断が可能。

商品企画担当者には、データマイニングを行い、数値的に合理的なアクションを自動的に提案してくれるソフトウェアがあるのだ。自動化システムは、ビジネスチャンスが生じた場合、リアルタイムで知らせてくれる。スプレッドシートやバインダーに綴じられたレポート、あるいはサンプル棚などの静的情報を見ているだけだった時代には、こういったチャンスは把握されず見過ごされていた。(図2参照)。

図2:自動分析では、手動で眺めるだけでは見逃しがちな、複数項目の関係性や傾向を明らかにすることが可能。例えばシューズにおける寒冷地域店舗での売上異常値など。

システムのサポートを得たデータ活用によって、商品企画担当者は戦略に専念し、プロセスを改善して、より的確な提案を素早く提供できるようになる。商品企画担当者は、デジタル商品画像という共通言語でこれを行うことによって、企画担当者が提案するSKUの幅広さ、品揃え、セグメンテーションへの理解を深め、実際の仕入れに活かすことができる。例えば、卸売企業であればシーズン前の商品選びや数量、配分、あるいはシーズン中の再発注に関する小売企業向けの提案をより情報豊かに分かりやすく改善することができる。その結果、より迅速な発注判断が可能となり、商機を逃すリスクが軽減する。 高品位システムによるサポートは、商品企画担当者がマーケティング部署と協力する上でも有効である。その時々の売れ筋商品のうち、在庫がある商品の画像を簡単に共有でき、従って、その小売企業のウェブサイトやカタログの表紙に、その時点でもっとも売上効果が期待できる商品を掲載することも可能だ。

 

双方向性

今や消費者は、画面上でダイナミックな情報のやり取りができるのは当然だと思っている。詳しい情報が出てくるだろうと期待して、カーソルを画面上の商品画像の上にかざすのである。商品画像をクリックすれば、選択した商品を詳しく説明したウィンドウが現れる。ただしそれは、商品企画担当者がビジネス判断にそうした機能を活用しているからである。

商品企画担当からみると、そうしたテクノロジーを導入することで随時更新される売上時点データを手に入れることができ、双方向性のあるレポート上で商品画像(商品番号ではなく)を再構成し、フィルタリングできる。商品番号7035276について集計しようとスプレッドシートのAC36セルを探し当てていた時代は、週刊のテレビガイドと同じように過去のものとなり、代わって登場したのが即座に売上データを表示できる動的画像である。

一方、仕入れの観点では、ドラッグ&ドロップで操作できる画像があれば、商品企画担当者は見た目上最もインパクトがあり、売上構成的にも満足できる品揃え計画をデジタル上でシミュレーションすることが可能である。(図3参照)。

判断を導く分析、システムによる提案、より直感的にわかる共通言語としての動的画像は、モバイルコミュニケーションに向いている。文字と数字だけのスプレッドシートや商品サンプルでは不可能であった手法である。

2015年1月に全米小売業協会(NRF)の主催で行われた「ビッグショー」では、メイシーズで最高オムニチャネル責任者を務めるR.B. ハリソン氏が講演を行い、消費者の嗜好が変化する中で、メイシーズがどのように対応しているかについて次のように話している。「数年前でしたらデスクトップパソコンの利用環境に力を入れ、その後余力があれば、小型デバイスへの対応を考えたでしょう。モバイルであるかは別として。この2年は、開発の中心は完全にモバイルフォーマットに移行しました。さらに、携帯電話用、タブレット用、それぞれに特化した環境を用意し、テクノロジーに応じた購買体験を提供できるようにしています」

消費者向けのこの戦略は販売スタッフ向けにも同様に導入すべき戦略である。モバイルテクノロジーを導入すれば、商品企画担当者は始終デスクにいる必要がなくなる。各店舗を周ったり、競合店で買い物したり、仕入先との人脈作りや消費者の観察により多くの時間を割くことができる。しかもその間、お互いに直接協力し合いながら業務上の重要な意思決定を行うこともできるのである。

 

つながり

プライベートでの日常的判断にインスタントメッセージやビデオ通話、グループフィードバックを利用するのに慣れている商品企画担当者は、今や同じような連携性を仕事場でも模索している(図4参照)。商品構成プラン、商品ラインの見直し、トレンド情報をデジタル化することによって、各チームはそれぞれの地域や部門を超えて連携し、トレンドの認識を共有し、クロスマーチャンダイジングのチャンスをいち早く割り出すことができる。以前は商談に向かうための移動時間中には、仕事ができなかったが、今やその間にトレンドに関するバーチャルミーティングを行ったり、OTB(仕入高予算)申請を遠隔で承認したりできる。商品企画担当者は、ソーシャルメディアから得た情報やデータも仕事のプロセスに組み込んでいる。 商品に対するフィードバックを社内関係者と社外関係者の消費者からクラウドソーシングしているのである。 消費者独特の新しい言葉使いで書かれたブログや商品レビューの検索ツールも活用している。

小売企業は、こうしたリアルタイムに近い知見を商品選びやセグメンテーションに組み込み、過去のシーズンの実績に関する事後検証や今後のシーズンのプランニングに活用している。動的な属性付けを行うこのコンセプトのメリットは、商品企画担当者が商品をどのように分類し、考えているのか消費者が理解しやすいという点である。これは、小売企業にとっても消費者の言葉でメッセージを発信するという意味で役に立つ。商品企画担当者も、品揃え計画や商品実績の見直し、過去のシーズンからの情報収集を行う際に同じ言葉を使うようになっていくはずである。

「マーケティングを行う際は、当店に対するレビューやソーシャルメディアに書き込まれた生の言葉を使います」。前述の2015年NRFビッグショー内で開催されたオムニチャネルパネル討論会で、ザ・リミテッドのダイアン・エリスCEOはこう話している(この討論会では、カート・サーモンのパートナーであり、メイシーズの元CAOであるトム・コールが進行役を務めた)。

「過去には、商品を美しく描写する言葉、つまりなぜフィット感が良いのか、なぜ特別なスタイルであるかなどをさんざん考えたのですが、必ずしもお客様には響きませんでした。ですがフィット感や、スタイル性、ファッション性についてお客様自身の生の声を活用できることこそが、お客様にとっては意味があるのです。その上でその言葉を私たちからのメッセージに組み込みます」

図3:ドラッグ&ドロップで操作できる動的インターフェースは、売上分析、製品ライフサイクル管理、トレンド情報を基に、バランス・収益性・視覚的訴求力に優れた商品構成に転換することが可能。

 

どこから始めるか

高品位マーチャンダイジングへの切り替えに乗り出したのは、企業の中でもまだ一握りである。しかし、程なくしてこれはスタンダードになるであろうし、その効果はとてつもなく大きい。これまでに公になった中で最も顕著な事例は、サンプル不要のデジタルショールームを開設すると公表したトミーヒルフィガーであろう。「トミーヒルフィガーは、物理的ショールームの終焉を告げている」と、1月のウィメンズウェアデイリー紙は報じている。これは高品位マーチャンダイジングのほんの一面であるが、一方でトミーヒルフィガーは次のように言っている。「デジタルショールームの投資回収は1年もかかりません。コストは1年間分のサンプルを準備するのとほぼ同額です」

他の小売企業やブランドでも、これまで発揮されてこなかったデジタル世代の商品企画担当者の力を引き出しつつ、取りとめもなく降りそそぐ静的データを収益につながる高品位データに転換し、最大5%の売上アップ、20%の利益アップを実現している。高品位マーチャンダイジングへの移行を実現するためのロードマップは、それぞれの現在の立ち位置と優先順位によって変わる。視覚化、システムサポート、双方向性、連携をそれぞれ進化させることでビジネス全体が上向き、そのすべてを結集した時に、今日のデジタル世界に対応した、真の意味での革新的モデルが誕生することになる。

図4:高品位の品揃え計画なら、チーム同士が遠隔でも視覚的に連携でき、売場全体としてまとまりと訴求力のある 品揃えが実現可能。

 

2015-8-7