現在ほど、サプライチェーンに迅速な対応や効率性が同時に求められている時代はない。

 小売業者は、かつてなく厳しいマクロ経済環境に直面しながらも、競争が激しさを増す市場において、膨らみ続ける顧客の期待に応えなければならないのである。しかしながら、小売サプライチェーンの本質とは、このような目標や課題に対処することであろう。

 サプライチェーンのリーダーは、コストコントロールや、コスト削減をしながら、これらのニーズに応えなければならない。効率を向上させコストを最小化する最も一般的な施策の中には、多くのサプライチェーン担当役員のごく身近に見つかるものも多い。

 以下に挙げる、様々な企業でよく散見される効率悪化の原罪である6つの『無駄の罪』 を是正すれば、サプライチェーンの非効率性と無駄を削減し、新たな価値を創造するのに役立つであろう。

 

【無駄の罪1】 時間の無駄

 時間の無駄はサプライチェーンのどのステップにおいてもとても厄介であり、そのため、効率的なサプライチェーンを阻害する最大の罪の1つとなっている。

 例えば、発送地の港で荷物が船積みの受付時間に間に合わなかったと場合を想定しよう。

 こうなると、その製品を積む次の船を予約しなければならず、それは丸々一週間後になるかもしれない。また、製品を目的地に予定通りに届けるためには追加作業が必要となるかもしれない。

 別の例として、サプライチェーンのもう一方の終端である店舗で配送トラックが店舗に乗り付けたところ、適切な人員がそ配置されていないことが発覚、そのために配送作業が予定より長くかかって、店舗のバックルームの混乱が増すという場合もある。

 多くの場合、サプライチェーンで時間の無駄が発生する原因は、サプライチェーン上行われる業務、期日、主なマイルストーンを明確に定義し、周知し、そのパフォーマンスを計測することができなかったことにある。

 サプライチェーンの運用においてリーダーである小売業者は、この無駄の罪に対処するために、サプライチェーン全体で製品の流れ全体を最適化することに注力している。港から配送センターまでといった一部分だけを取り上げ部分最適に偏ることなく、製造から店舗での陳列、顧客への受け渡しに至るまで、全体を対象としている。

 これを効果的に行うには、購買、在庫管理、輸送の各機能が物理的・組織的に隔てられている状態を克服し、1つのグループとして協力できる体制にしなければならない。

 企業内の各機能、さらに異なる企業間が連動することで、必要な情報を提供し合い、業務タイミングと業務スケジュールの可視性を高めなければならない。

 

【無駄の罪2】 作業の無駄

 作業の無駄は、業務が非効率的な形で遂行された作業や、サプライチェーンの複数のポイントで発生する同じ作業であり、これらは顧客に対して何の価値ももたらさず、会社にとっての利益にもならない。

 例えば、部門間や企業で信頼関係や明確な意思の疎通がないために、ある場所で製品の質を詳細にチェックしたにもかかわらず、別の場所で同様のチェックを再び行うということがよくある。

 また、販売員が特定の品物を探しに店舗のバックルームに向かったが、よく整理されていなかったり、予備在庫の正確な情報が無かったりしたために見つけられないという場合にも、作業の無駄が発生する。

 作業の無駄を克服するには、バリュー・ストリーム・マッピングによって、サプライチェーンの各ステップで実施するプロセスを定義し、文書化し、理解することから始めるのが効果的である。

 それぞれの任務を、サプライチェーンの最も効率的な地点だけで一回のみで完了させるようにすることで、余計な作業の排除に努めるべきである。

 例えば品質チェックは、製品が流通センターに到着したときではなく、製造プロセスで実施すべきである。何か欠陥があっても、簡単に修理するには流通センターに到着してからでは遅過ぎることが多いからである。

 また、効率向上には、サプライチェーン全体で最新情報を共有することが重要である。

サプライチェーンの運用においてリーダーである小売業者は、販売フロアとバックルームの両方で在庫情報の正確さを高めるために、RFIDタグを使用している。

 これにより、サプライチェーン全体を通して利用可能な在庫の全体像を正確に把握できるようになることで、オムニチャネル・リテーリングが可能となり、最終的に在庫の生産性と収益性の向上へとつながる。

 作業の無駄に関連する問題に取り組めば、実際に利益を上げることができる。

 例えとして、カート・サーモンのクライアントである1社のケースを紹介する。このクライアントは、売上高27億ドルの書籍卸売・小売業者である。

 同社の施設では手動で一括ピッキングするプロセスを運用しており、この方法では、ピッキング場所まで長い距離を社員が移動する必要があった。

 同社は様々なピッキング方法を検討した結果、投資収益率、SKU回転速度、SKUの特性、保管の必要条件への適合性という面から、自動ピッキング・ソリューションを選択した。このソリューションを導入したところ、ピッキング率が35%向上した。

 

【無駄の罪3】 輸送の無駄

 輸送と流通のコストは多くの小売製品コストの大きな割合を占め、それは往々にして20%にも上る。

 コストの圧縮に対するプレッシャーが常にかかる中では、輸送の無駄をそぎ落とすことが重要である。

 この無駄は様々な形で現れる。資源の未活用、不適切な輸送方法の選択、整合性の無い流通ネットワーク、還元物流(リバースロジスティクス)機能の欠如などである。

 購買物流においてキャパシティが十分に活用できない原因は、異なる製品ラインや複数の製造業者の輸送を統一できないことである。

 この種の無駄に対処するには、調達と輸送のパターンを定期的に評価することが重要である。

 このような流通経路の分析を常に実施すれば、購買物流の統合によってコンテナ利用率を向上させる機会を発見するのに役立ち、さらには世界規模の輸送費交渉においてする際にこの分析結果が役立つ。

 出荷物流においては、配送車両の計画と配送スケジュールを効果的に作成できなければ、輸送キャパシティの非効率的な活用につながる。

 さらに、多くの企業では配送方法の選択肢が1つしかないか、極めて限られた数しかないことが我々の調査からは見えている。

 これにより、発送部門の業務が単純化される場合がある一方で、選択した配送方法と必要なサービスとの間にミスマッチが生じることになる。

 この無駄の大部分は、出荷物流を広い視野で検討し、配送業者のスケジュール策定や配送業者の選択のプロセスに(社内外の)顧客のニーズを盛り込むことで取り除くことができる。

 最後の、そして最も見落としがちなステップは、還元物流(リバース・ロジスティクス)戦略及び計画の策定である

 顧客からの返品、在庫バランスの再調整、不良品対応など様々な場合で、製品をサプライチェーンのしかるべき位置に届ける効果的かつ効率的な方法を持つことが決定的に重要となる。

 その戦略には、還元物流発生の回数を最小化する方法を決定すること、店舗とDC内のプロセスを合理化すること、そのプロセスを管理する最善の方法やサービス提供業者を選定することを含むべきである。

 例えば、複数ブランドを展開するある専門小売業者は最近、新しいオペレーションモデルと、市場投入スピードのビジョンに関するニーズを満たすために、配送ネットワークの調整に集中的に取り組んだ。

 サプライチェーンのビジョンにおいて最も重要な要素は、独自の製品ルートの実現が可能であり同時にコスト削減と市場投入スピードを改善できるような、輸送ネットワークを再設計することであった。

 この取り組みには、世界の輸送の流れ、輸送業者、出庫機能の見直しが含まれていた。

 ネットワークと輸送を最適化する施策を導入した結果、年間の海上輸送費用は35%削減、年間の国内出荷物流費用は10%削減、市場までの輸送スピードは33%改善された。

 

【無駄の罪4】 過剰在庫・カスタマイゼーション・過剰生産

 製品やSKUの急増は、製品ライフサイクルの短命化により、ますます悩ましい問題となっている。

 消費財のサプライチェーンが長くなると、問題がさらにややこしくなる。最善の賃金率を追い求める下請製造業者はますます遠く離れた国へと移動していくことが複雑化の要因となっている。

 これらすべての要素が原因となって、サプライチェーンの中に、しかも間違った場所に、過剰に在庫が蓄積するという事態に陥る。

 この問題に対処するには、小売業者と消費財メーカーが、顧客から供給業者に至るサプライチェーン全体で、需要計画を協力して策定する堅実なプロセスを作り上げることにより、そこに関与する全員が同じ在庫目標に向けて努力できるようにしなければならない。

 協力によって需要計画を策定するこのアプローチにより、顧客の「真の」需要をよりよく把握できるようになると同時に、サプライチェーン全体で商品の最適な流れを支えるべく、サプライチェーンに沿って安全在庫を調整することができるようになる。

 そして、衣料卸売りでの特別なラベリングやパッケージングから、顧客がデザインしたシューズに至るまで、製品のカスタマイズを求める顧客が増加するに従い、カスタマイズを行う場所をサプライチェーン顧客に近く最も経済的なポイントまで先送りすべきである。

 カスタマイズをできるだけ後送りすることによって、最大限の顧客に対して最大限の共通在庫からサービスを提供することが可能となり、そのため在庫管理を単純化出来る。

 同じ考え方が製造における取り組みにも当てはまる。顧客と下請製造業者が協力して、最終製品やSKUの決定を行う最終地点を明確に規定するのである。

 例えば、生地、輪郭、スタイル、サイズ、顧客独自のパッケージングの要求を決定する期日を段階的に設定することで、プロセスの最初に最低水準の商品を置くよりも、時間とコストの効率性を向上できる。

 在庫の最適化も過剰の削減に役立つことがある。

 国内の物流センターよりも仕入先である近隣国の外注先に製品を保管したほうが、企業はこれまでより迅速に需要に対応できるようになると同時に、無駄を省くことができる場合が多い。

 サプライチェーンの運用においてリーダーである小売業者は既に、この無駄の罪を克服することで恩恵を得ている。

 例えば、ある大規模量販店は、安全在庫を一カ所に集中させる階層的な在庫モデルと、ベンダから店舗までの経路のオプションを開発することにより、ネットワーク全体で22%の在庫を削減した。

 

【無駄の罪5】 不良品

 不良品がサプライチェーン内を移動するに従い、不良品対費用は増加し続ける。つまり製品の製造地かサプライチェーンのできるだけ初期に、不良品を排除することが非常に重要となる。

 製造段階での製品の欠陥、流通段階でのピッキングの間違い、輸送中の配送ミス、小売段階での在庫や価格の間違いなど、不良や間違いはサプライチェーンのどこででも起こり得る。

 鍵となるのは、これらの間違いをサプライチェーンの中で先送りするのではなく、発生した場所で発見し修正することだ。

 この目的を果たすには、機能の枠を超え、多くの場合は企業の枠も超えて協力し、サプライチェーン全体で発生する不良と間違いの一般的な種類を特定することが必要である。

 もちろん、不良がどこでどのように発生するかを特定することは、戦いの道半ばでしかない。品質保証の手順と計測基準を明確に定義して継続的に評価すべきであり、サプライチェーン全体で不良率を計測し周知しなければならない。

 

【無駄の罪6】 知識の断絶

 現代の企業においてサプライチェーンのネットワークが複雑さを増し、そこに関与する各種の下請製造業者、3PL、世界の顧客基盤が拡大していくにつれ、すべての業者の間で情報を共有することは非常に複雑となるが、同時に極めて重要になってくる。

 この情報の断絶の問題に対処し、組織全体とサプライチェーンで幅広くスムーズな意思疎通を促進するのに役立つのが、テクノロジーである。

 例えば、製品ライフサイクル管理システムがあれば、幅広い供給ネットワーク全体で製品の定義と開発を行えるようになる。

 企業リソース管理システム(ERM)は組織内の情報の共有と同期を円滑化する一方、電子データ交換システムは、システムや提携先との情報共有を可能にする。

 共同計画策定アプリケーションは、小売業者内や、提携先との間で、互いに協力して需要計画の策定を進めるのに役立つ。

 テクノロジーのツール以外にも、主な供給業者や顧客との戦略的関係を確立することで、協力関係の改善に役立つだろう。

 このような関係の構築は、投資である。

 ネットワーク全体で無駄を省き効率性を改善できるような、プロセスやテクノロジー、改善チーム(プロセスのイノベーションと改善に特化した機能間・組織間チーム)を策定し導入することが重要である。

 テクノロジーの発展、消費者の行動の変化、グローバル化により、小売サプライチェーンで間違いや余剰が許容される余地はかつてなく小さくなっている。

 これら6つの一般的な無駄の罪に対処すれば、組織はサプライチェーンを効率化でき、状況に素早く対応でき、有利な立場を占めることができるようになり、これによって将来の成功を実現できるようになるだろう。

2012-11-8