競争が激しくなり、小売企業が消費者の視点から自分たちを差別化する新しい方法を模索する中で、時には顧客体験の最終ステップとなりうる「返品」に注意を払うべきである。現在のオムニチャネル環境では、チャネル統合を考慮した顧客体験、在庫管理、物流を考慮した返品戦略が不可欠である。

特に、ホリデーシーズン明けはその重要度が大きく高まる。この時期は返品取扱量がピークを迎え、顧客によっては贈り物を返品するために初めてその小売店を訪れることもある。

しかしこの重要な時期への対応で後手に回る小売企業も多い。全小売カテゴリーをカバーした小売企業約60社を対象としたカート・サーモンの調査によると、多くの企業が、返品体験を効率的で簡単なものにするための条件を十分には備えていないことが分かった。例えば、68%の企業がオンラインで印刷できる送料支払い済み返品宛先ラベルを提供していたが、そのラベルを商品発送時の包装に同梱していた顧客はわずか12%だった。ある小売企業に至っては、顧客が返品するために、まず顧客サービスホットラインに電話することを消費者に強いていた。

オンラインでの購入増加が一因となって返品の量が増えるに従い、このようなポリシーはブランドにとってますますリスクをはらんでいる。全米小売業協会の試算によると、2011年のホリデーシーズンには返品が4%増加して460億ドルとなり、2012年以降はさらに増え続ける可能性が高い。

大手の小売企業はオムニチャネルにおける返品を顧客体験の面と、在庫管理・物流の両面から捉えている。

顧客体験のための手続き簡素化

顧客体験の視点からすると、返品の手間をできるだけ省くことで顧客は満足し、再び来店してくれるようになる。その逆に返品の手間がかかればかかるほど、顧客はそのチャネルで今後買い物する気が失せ、最悪の場合永遠に顧客を失ってしまう。

返品におけるベストプラクティスは、購入したチャネルを問わないシームレスなオムニチャネル返品体験を提供することである。

店舗での返品については、顧客の心をつかむ体験を安定的に作り出すには、どのようなテクノロジーや店舗設計、店舗スタッフが必要となるか、考えなければならない。例えば、多くの小売企業はチャネル別に構築されている2つ以上のCRMシステムを持っている。客がオンラインで購入したものを店頭で返品しようとしたときには、返品がスムーズに行われず、結果長い行列の原因となっている。この問題を解決し、チャネル間でシームレスな体験を作り出すと同時に、オムニチャネル返品における物流の混乱を軽減するには、コストはかかるが、ユニバーサルに統合されたCRMシステムの整備が最善の方法である

また顧客の返品の手間を省くことと、新たな買い物を促すこととをうまく両立させることも本質的に重要である。

例えばシアーズは、顧客が自動車から降りずに商品を返品したり交換したりできるドライブスルー・サービスを提供している。コストコでは返品のために来店する顧客専用の入口を別に設けて、返品エリアを店舗の他のエリアから離すようにしている。

これらのオペレーションは返品プロセスを迅速かつ円滑化できるかもしれないが、顧客とのコミュニケーションを増やすことはできない。そうでなく、返品を消費者との再接点の機会と捉え、消費者がブランドに満足し、再度買い物をしてくれるような体験を作り出すことを目指すべきである。カート・サーモンの推定によると、返品の為に店舗を訪問した客の半数以上が、返品したその足で新たに買い物をしているのである。

流通センターに直接返送できるオンラインでの返品の場合、あらかじめ印刷した送料支払い済みの返品ラベルを発送時の包装に同梱することがベストプラクティスだが、上述のように、それを実践している小売企業は現在のところ12%にとどまっていることがカート・サーモンの調査で分かっている。これにはもちろんコストがかかる。特に返品率が40~50%以上に上る小売企業にとってはこのコストは無視できない額となる。しかし、顧客ロイヤルティが上昇し、これが将来の売り上げにつながることを考えれば、十分に元が取れる。

送料無料化にも同じことが言える。費用はかかるが、十分に元が取れるのである。

その顕著な例の1つがザッポスである。

同社は発送も返品も送料無料としており、CEOのトニー・シェイ氏はハーバード・ビジネス・レビュー誌のインタビューの中で、このポリシーは十分に元が取れていると述べている。

「当社にかかる送料負担はかなりの額に上りますが、私たちはこれをマーケティング費用として捉えています。当社はまた、心を決めかねている人々のために365日のリターンポリシーを実施しています。(当初のリターンポリシーはわずか30日間でしたが、顧客の熱心な要望でこれを延長し続けており、返品期間を延長するに従い顧客のロイヤルティが上昇しています。)当社の返品率は高いレベルにあり、総売上高の3分の1を上回りますが、ザッポスで買い物するときのリスクをほとんど取り除くことができれば、顧客はそれ以上の買い物をし、長期的には顧客にさらに満足していただけるということを、当社は学びました。」

これがすべての小売企業にとっての答えとなるわけではない。中でも、特に容積や重量の大きな商品を扱う企業の場合はザッポスの例は適用しない。しかし、アパレルやフットウェア(靴)の小売企業にとっては、消費者が試着せずに心置きなく商品を注文できるようにすることは、リスクのない返品環境を作り出すこととであると言えるかもしれない。

最後に、ホリデーシーズンの頃に返品数が急増した場合には必ず力を入れなければならない。これは、オンラインの返品でも店舗での返品でも、労働力と取り扱い能力にとって大きな意味を持つ。

在庫管理と物流を活用する

顧客が手間をかけずに満足して商品を返品したら、次の問題は、その商品をどうするかである。普通、小売企業は2つの選択肢が残されている。店舗か、物流センターかだ。

この判断のプロセスは、タイミングと品揃えを軸に考えるのが一般的である。

もちろん、オンライン限定の商品は物流センターに残しておくべきだが、どのチャネルでも購入できる商品は、最終的には店舗と物流センターのどちらにでも送ることが可能である。

返品がシーズンの前半に発生し、その商品がよく売れている店舗に返品された場合には、その店舗に置いておけばよい。店舗での需要よりオンラインでの需要の方が大きい場合、または店舗に大量の在庫がある場合は、物流センターに送り返し、オンライン注文への対応に使用するか、別の店舗に移せるようにするのがよい。いかなる決定を下すとしても、収益性の視点から判断しなければならない。10ドルのTシャツを町中に、あるいは全国のあちこちに発送すれば、物流関連費用で利益をあっという間に食いつぶしてしまうかもしれない。

もちろん、これはすべて商品の状態が良いことが前提である。状態が良くなければ物流センターに戻すことになる。もし顧客が商品を物流センターに返品し、かつオンラインでの需要が大きい場合は、商品を物流センターに置いておくべきだ。しかし、その商品が店頭で飛ぶように売れている場合は、従来の出荷と同じタイミングで店舗に送り、コストを抑えることを検討するのがよい。

シーズン終盤に返品された場合、あるいはシーズン終了後に返品された場合には、問題が複雑になる。割引商品を売り切る能力が最も高いチャネルに、その商品を送るべきだ。いかなる場合でも、商品が販売できない状態にある時間を少しでも短くすることが目標である。

このような物流上の判断をするには、小売企業は有効在庫と需要の両方についての全体像を極めて明確に把握する必要がある。しかし現在では、これらの指標を十分に見通せず、効率的でコスト効果的な判断が下せない小売企業も存在する。

ここでテクノロジーが役に立つ。一部の小売企業は3PLを活用し、各チャネルの返品を追跡・管理する新しいツールを導入している。

ここではRFIDも大きなメリットをもたらす。特に中核的な補充商品に有効である。これにより、すべてのチャネルと店舗で有効在庫を正確に見通すことができるようになり、そのため、返品された商品をどこに送るかの意思決定が格段に判断しやすくなる。

大手の小売企業は、返品を顧客との関係の終点ではなく、長期にわたる健康的な関係構築の過程に起きる一つの小さな障害と見ている。そこにたどり着くには真にオムニチャネル的な返品プロセスが必要となる。手間のかからない体験を顧客に提供し、小売店が顧客との関係を再構築することで次の買い物を促す機会となり、できるだけ早く効率的にその商品を次の顧客に手渡すことで収益性を維持するのである。

2013-10-31